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「パンツァー・トゥロール」

 マイヤーはルガーのマガジンを銀の弾丸に換え、霊力を込め打ち出した。白銀に光る弾は数体の魔獣の頭を粉砕する。その破壊力たるや、通常弾の非ではない。

「スネグーラチカー」

 ローズと周防が必殺技を繰り出す。この技はかつてマリア・タチバナが得意としていた必殺技である。それを彼らは二人の霊力を合わせる事により、きわめて短いサイクルで何度も打ち出す事を可能としていた。

「こっちです。マイヤーさん!」

 カフェを出た5人は比較的魔獣の少ない裏道を、駅に向かって走っていた。駅にいけば帝國華撃團の人間がいると判断したからだ。

「シーリス!フローナ!わたしから離れるんじゃない!」

 マイヤーは背後から追いすがる敵を倒している間に、シーリスとフローナの二人が先行してしまったのに気付き呼び戻す。

「平気だよ。シーリス魔物なんて恐く無いもん」
「フローナも恐くないよ」

 先走る二人を見て、マイヤーは舌打ちした。

「後方の敵は私達が引き受けます。あなたは彼女達を!」
「すまない。頼む!」

 マイヤーが双子の姉妹を追い、駆け出した瞬間、シーリスがつまづき転ぶのが目に入った。

「シーリス!」

 マイヤーが叫ぶ!三体の魔物が転んだシリースに目をつけたのだ。

 パーンッ!パーンッ!

 続けざまに二体の魔獣が吹き飛ぶ。が、しかし!

 ガチン!

「しまった!」

 最悪の時に弾切れである。

「逃げろ、シーリス!」

 だがシーリスは逃げなかった。 

「ヤーーーーーーー!」

 シーリスが叫ぶを同時に、魔獣は吹き飛ばされた。

「な!」

 マイヤーはシーリスが魔獣を吹き飛ばしたのに驚いた。今までに何度も彼女の力を見てきたが、今回のように吹き飛ばすという事は一度もなかったのである。

「シーリスを傷つけるのは駄目なんだからね!」
(そうか、戦闘と普段とでは力の使い方が違うという事か)

 マイヤーは改めて彼女の力に感嘆した。

「マイヤーさん。魔獣の数がしだいに増えてきています!」
「なに!」

 マイヤーの後ろに駆け寄ってきた周防は彼の愛銃「ピースメーカー」を撃ちながら叫んだ。
 ローズも母マリアから譲りうけた「エンフィールド改」を手に戦っている。

「マイヤァ、前からいっぱいくるよぉ」

 フローナとシーリスが走ってマイヤーの元に戻ってきた。

「なんてことだ・・・」
「そろそろ弾がなくなってしまうわ」
「こっちもです!」
「四面楚歌。万事休すか・・・」

 マイヤーが最後のマガジンをルガーに込め、言った直後の事だ。
 何処からともなく大きな声が聞こえて来た!

「ええ、感じやでぇぇぇぇぇぇぇ」

 ズドドドドドドッーーーーーン 

「何!」

 マイヤー達は目を見張った。周囲にいる魔獣の殆どが何者かによって吹き飛ばされたのだ。

「おーい!大丈夫かー!」

 声のする方を向くと、見知らぬ人間がこちらに向かって走ってきた。一人は眼鏡をかけたチャイナドレスの女性。一人は体に密着した服の上から、空手着のようなものを着込んだ女性。最後の一人は・・・マイヤーが忘れられようはずもないモギリの服を着ていた。

「ま、まさか、あれは」
「知っているのですか?マイヤーさん」
「ふっ、どれも見覚えのある服装だ・・・。おそらくは・・・。ん?どうやら今の爆発で生き残った魔獣は散ったようだな」

 そう言っている間に三人の助っ人はマイヤー達の元にたどりついた。

「大丈夫ですか?魔物に囲まれていたようですが?」
「ああ、大丈夫だ。今のは君達が?」
「へへへ、うちの携帯用の秘密兵器や。一回こっきりしか使えんのが玉に傷やけどな」
「そうか。助かった礼を言う」
「助けてくれてありがとうお姉ちゃん」

 マイヤーと双子の姉妹は三人に対して頭を下げた。が、ローズと蘇芳は警戒した表情を見せていた。素性のわからない者に心を許すことはないようだ。

「なんだぁ?そっちの兄ちゃん達はよぉ。助けてやったのにその目はないだろう」

 三人のうちの一人、センカがローズと蘇芳に向かって喧嘩ごしに言う。

「おいセンカ!礼を言ってもらいたくて助けたんじゃないんだ。その言い方はよせ」
「でもよ隊長・・・」

 隊長という言葉にマイヤーは反応した。
(間違いないな・・・隊長という言葉、彼女達の口調、格好・・・まるで昔がもどってきたようだ)

「いや、そちらの女性の言うとおりだ。ローズ君に蘇芳君。礼くらい言っておきなさい。この方達は君達の新しい仲間、帝國華撃團の隊員達なのだからね」

 マイヤー以外の人間に、旋律という名の衝撃が走り抜ける。
 偶然もここに極まれり。
 ・・・多少あざといかもしれないが、書いてしまったものはしょうがない・・・話を先に進めよう。

「今なんと言いました!」
「帝國華撃團と言ったのだよ」
「あ、あんたらいったい」

 神凪達は動揺を隠せなかった。

「わたしは元帝國華撃團「雪組」隊長。ハインリヒ・フォン・マイヤーだ」
「もと雪組の隊長?。・・・は!失礼しました!」

 神凪は姿勢を但し、海軍式の敬礼をする。

「自分は帝國華撃團「花組」隊長!神凪近衛海軍少尉であります!」
「帝國華撃團「花組」隊長!?」

 今度はローズと蘇芳が驚く番だ。

「あなたが花組の隊長なのですか?」
「はい」

 神凪の言葉にローズと蘇芳は顔を見合せ、次の瞬間直立不動になった。

「助けていただいたのに礼も言わず失礼しました。わたしはローズ・タチバナ。帝國華撃團「花組」に入隊するため、本日この国へやってきました」
「同じく、蘇芳・タチバナです。先程の無礼お許しください」

 突然の事に神凪達は戸惑ってしまった。

「な、なんや、あんたらが帝撃の最後の仲間やったんか」
「なんだよ、そうならそうと早く言ってくれよ」
「君達が・・・・・・ん?まさか・・・まさかこの娘達も?」

 更なる動揺が神凪の体をかけめぐる。

「ああ、そうだ。彼女達はイリス・シャトーブリアン婦人の娘」
「シーリスです」
「フローナです」

 絶句!

「ま、まさか。こんな幼い少女まで隊員だったとは・・・」
「イリス婦人も入った頃は幼かったて聞いとるけど・・・いったい何歳やの?」
「んーとね、シーリス五歳だよ」
「フローナも五歳だよ」

 ・・・若い・・・若すぎる。いいのか?こんな若い少女を戦場に送って・・・。悩みながらも話は続く。

「あたいの半分以下だぜ。大丈夫なのかよ」
「彼女達の力は本物だ。十分以上に君達の力になってくれるだろう」
「そ、そうですか」
(少し不安だけど、元雪組の隊長がこう言ってるんだ。信じよう)

「ん?ちょっと待ってや!魔獣の死体が消えとるで」
「なに?」
「本当だ、いったいいつの間に」
「・・・何者かが消し去ったか?」

 マイヤーが口を開くと同時に、頭上から声が聞こえてきた。

「そのとおり、魔獣の骸は我々が回収した」

 突然の声に、その場にいた全員が上を向く。ひときわ大きな倉庫の上に4人の男が立っていた。黒いマントに身をつつみ、その顔は奇妙な面で覆い隠されている。

「何者だ!」

 マイヤーが叫ぶ。

「ふっふっふ、我らは王魁峰(おうかいほう)!ある目的のために集いし者だ」
「王魁峰?」
「おまえたちがあの魔獣を放ち、この横浜に魔法陣を張ったのか!」

 神薙の声に、事の次第をしらないマイヤー達は目を開く。

「魔法陣だと!ここに魔法陣が張られているのか?」
「ええ、自分達はあなた方と合流する事と、この魔法陣の調査のためにきたのです」
「ほほぅ。魔法陣の存在に気がついていたとはな。たいしたものだ」

 左端に立つ男が声に嘲笑の色を浮かべ言った。

「はん!この魔法陣の目的はすでに分かるっとるんや!遠慮のぅ、壊させてもらうわ」

 春蘭は王魁峰を指差し、にやりと笑った。・・・・どうやら春蘭は、母紅蘭と違いかなり過激な性格をしているようだ。

「ふむ、まだ必要な力を集めきってはいないのですよ。そのような真似はやめていただきたいですね」

 真っ白な面に美しい彫刻を施した金髪の男は、さも困ったようなしぐをする。

「やめろと言われて、はいそうですか、と言えるかよ。この馬鹿」

 センカの言葉に、白面の男は怒気を示す。

「ドレイクどの。ここは、わたくしに任せていただきましょうか?」
「・・・・いいだろう」
 青の面をつけた一際大きな巨躯を持つ男は、白面の男を一瞥するとマントを翻しその場より消えた。
「まかせたぞ」
「返りうちに合わぬようにな・・・」

 王魁峰と名乗る集団は白面の男を残し、次々と姿を消した。

「さて、あなた方は少々目障りですね。我々の崇高な目的を邪魔しようとする」
「なにが崇高な目的や。魔獣を操り人々を苦しめとる悪党が!」

 この問答の間、蘇芳とローズは周囲に気配を巡らし、いつでも攻撃ができるように構えている。中央にシーリスとフローナを囲むように、自然と陣形ができる。

「ふ、あなた方のような下賎な人間は、このわたし!白石のダルタニヤンがあなた方に引導を渡してあげましょう!」

 ダルタニヤンと名乗った男は、白い仮面を外した。白い肌に青い瞳、黄金の髪をもった美丈夫である。一瞬目を細めたダルタニヤンは右手を高々とあげた。
 すると、地面の土が盛り上がり、巨大な魔獣に姿を変える。

「な!なんだと」
「ものすごい数だ」
「これは、まずいわね」
「マイヤァ」
「なにこれー」
「あかん、この数はやばいで」
「くそ、やべぇな」
「・・・・・・・」

 あっというまに、数十体の魔獣が姿を現した。圧倒的に不利である。

「下賎の者よ!己の愚かさを呪い、この人形達に殺されるがいい」
「自分で引導わたすと言っておきながら、こんな手を使うなんてなんて奴だ」
「はっはっはっはー。この者達は私の力が作り出した人形。したがってこの者達の力は私の力なのですよ」

 ものは言いよう。

「さぁ、私のかわいい人形達よ。愚かなる人間を殺してさしあげなさい!」
「くっ」

 神凪達が覚悟を決め、身構えた。
 と、その時である。

「そこまでよ!」
「なにぃ!」

ドンッ!

 神凪達の立つ道の先。十字に重なりあった交差点に、二つの爆煙が立ち上る。

「帝國華撃團、参上!」

 勢いよく煙を散らせながら現れ出たは、霊子甲冑「神武改」。
 れいか専用機「麗武」。
 そして・・・・。

「みなさん、大丈夫ですか!」

 桜色に輝く吉野専用機「翔武」

「吉野君!れいか君!」
「おーっほっほっほっほっほ。私が来たからには、もう大丈夫ですわ」

 吉野とれいかは、構えをとった。

「ちょっと遅いでー、お二人さん!」
「まったくだぜ」

 春蘭とセンカは安堵の色を浮かべ苦笑する。

「あ、あれが帝國華撃團の・・・霊子甲冑」
「ああ、そうだ。あれこそが帝國華撃團が誇る、霊子甲冑「神武改」だ」

 目をみはるローズ達とは裏腹に、突然現れた神武改に戸惑ったのは、白石のダルタニヤンである。

「帝國華撃團だと?・・・そうか貴様達が、あの・・・・」
「れいかさん。わたしが道を作ります!その道を使って神凪さん達を!」
「わかりましたわ」

 吉野はダルタニヤンが油断したスキをつき、先制攻撃を行った。

「はぁぁぁぁぁぁぁ」

 バクンッ!!シュオオオオオオオオオオオオ

 吉野の気合とともに、翔武後方にある縦二連型霊子力エンジン左右に取り付けられた保護装甲が勢いよく開き、中から十数枚の放熱パネルが天を仰ぎ広がった。さながら、今まさに飛ばんとする雄々しい鷹の翼を思わせる。

「破邪剣征・・・」

 放熱パネルが桜色に染まる。

「桜花放神!」

 翔武により増幅された技が、神凪達より少し離れた位置の魔獣を一掃する。

「よし、みんな!あそこからこの包囲網を抜けるんだ」
「了解!」

 神凪の言葉に、皆が一斉に駆けだした。ただ、シーリスはマイヤーに。フローナは周防に抱えられている。

「むっ!やつらを逃がすな!」

 ダルタニヤンの声に、魔獣は叫び声を上げながら神凪達に攻撃を加えようと迫る!

「そうはさせませんわよ!」
「なに!」

 吉野の作った道を、滑るように駆け出していたれいかは、いきなり進路を変え、魔獣の密集地帯に飛込んだ。

「神崎風塵流」

 麗武も翔武同様に後方の保護装甲が開き、放熱パネルが広がった。こちらは純白の放熱パネル。湖に舞う白鳥の様である。

「胡蝶の舞!」

 麗武の周囲にいた魔獣は、一瞬にして焼き固められ粉砕した。

「れ、れいか!あぶねーじゃねーか!」

 すぐ近くにまで熱波が押し寄せてきた事に驚いたセンカは、大声を上げれいかを批難する。

「おーっほっほっほっほ。ちゃんと効果範囲を考えていますから大丈夫ですわ」
「そういう問題じゃないような・・・」

 神凪は少し冷や汗をかきながら言った。

「とにかく、今の攻撃でかなりの敵が一掃できた。このまま逃げきるぞ」
「神凪さん!新轟雷号は第312ゲートに止まっています!」
「わかった!すぐに戻ってくる。それまで奴等を押えておいてくれ」
「了解!」




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