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「ひさしぶりだな。米田中将」
「おう、かれこれ10年ぶりか。マイヤー」

 新轟雷号の通信機を使い、マイヤーと米田が会釈をかわす。

「しかし災難だったな。ついた早々魔物に出くわすとはよ」
「いや、おかげで新しい花組の素顔を直に確認できた、かえって好都合というものだ」
「け、相変わらず辛辣な意見だな。ま、おめーらしいと言えばおめーらしいか」

 米田はずいっと、身を乗り出した。

「で、どうでい。あいつらの印象はよ」
「悪くはない。あとは戦闘が出来るかどうかだ」

 マイヤーは、格納庫を映し出している画面をみる。

「全神武改の搭乗を確認。固定します」

 『虹組』隊長の内田美緋はあざみに向かって報告する。

「神凪くん。新しく来た彼女達の霊子甲冑は、個人レベルでの調整を行っていないため、完全ではないわ。その事を頭に入れて、行動するのよ」
「わかりました!」
「うちも出来る限りの援護をするよって、気負いしたらあかんで神凪はん」
「ああ、頼りにしてるよ」
「シーリス、こんなの乗るの初めてだよ」
「フローナも!」
「へへへ、恐くなったらいつでもあたいの後ろにまわんな。あたいが守ってやるからよ」
「うん!」

 新轟雷号から上部ハッチがせり上がり、ゲートに設けられた射出口とつながった。

「神凪隊長。今からあなたの戦いぶりを見せてもらいます。期待を裏切らないでください」
「あ、ああ。隊長としての責務ははたすつもりだ」
「・・・・」

 何故かローズの言葉には刺がまじっているように聞こえる。

「最終安全装置解除!いつでも射出できます」

 美緋の声に、あざみは軽くうなづき。そして、勢いよく叫ぶ。

「神武改射出!」

ガシュッ!

 軽い衝撃とともに、七体の神武改が打ち出された。

「さて、お手並み拝見といくか」

 厳しい目つきをしながら壁にもたれかかっていたマイヤーは、腕を組んだまま呟いた。




「はーっはっはっは!どうしました。もう終わりですか」
「こ、この程度、どうってことありませんわ」
「てやぁぁぁぁぁ!」

 神凪達が新轟雷号に戻っている数分の間、吉野とれいかは大量の魔獣に苦戦をしいられていた。いつかの式神のように後から後からわいて出てくるのだ。しかし、これはダルタニヤンの力が作りだしている魔物。いずれ限界がくるのは明白だ。

「れいかさん、あと少しです、あと少しで神凪さん達が来てくれます!」
「ふっ、何をおっしゃるのかしら吉野さん。この程度の雑魚に少尉の手を煩わせる事はありませんわ。私一人で十分ですことよ」

 れいかの薙刀がまた数体の魔物を吹き飛ばす。

「ほほぅ、言いますねぇ。気にいりましたよマドモワゼル」
「おーっほっほっほっほ。わたくしに目をつけるなんて、敵とはいえ見所がありますわね」
「たとえ声だけであろうとも、すばらしい女性というのは分かるものです」

 ダルタニヤンは目を細め、笑った。

「では、わたくしの相手をしていただけませんこと?」

 れいかは薙刀をダルタニヤンに向け、挑発する。

「その必要はないでしょう、どうやら待ち人が来たようです」

ドドンッ!

 ダルタニヤンが言うと、一際大きな音とともにそれは現れた。

「帝國華撃團花組、参上!」
「神凪さん!」
「あら、もう来てしまったんですの。残念ですわ。もう少しでわたくし一人で始末をつけましたのに」
「・・・けっ、また言ってやがるぜ。この女は」
「本当の事ですもの。仕方ありませんわ。おーっほっほっほっほっほ」

 れいかは高笑いをあげながらも、神凪達の元に後退する。

「れいかくん、吉野くん。大丈夫か!」
「はい!大丈夫です。まだ戦えます」

 神凪達はシーリス機、フローナ機を中心に隊列を整える。

「ようやく全員揃ったというわけですか。では、わたしもそれ相応の礼節をもち、お相手して差し上げましょう。」

 軽い笑みを浮かべたダルタニヤンは、腰に下げた剣を抜き天に掲げた。 

「出でよ、スュペルブジュルダン」

 ダルタニヤンが叫ぶなり、地面が盛り上がり赤いマントをつけた巨大な甲冑が現われた。
 宝石を思わせるダークブルーの輝きを放つその機体は、『美しきヨルダン』の名にふさわしいものである。

「あれは!」
「さしずめ敵の霊子甲冑というところか」
「尋常でない霊力を感じますわ」

 神凪達は、前方に群がる魔獣を牽制しながら、スュペルブジュルダンを見据える。

「さぁ、わたし自ら相手をしてさしあげましょう。どこからでもかかってきなさい」

 スュペルブジュルダンに乗り込んだダルタニヤンは、剣を構え叫んだ。

「センカはシーリス達の直衛を。春蘭、ローズ、蘇芳は後方から魔獣の掃討にあたってくれ。れいかくんは右翼から奴のうしろに!吉野くんは援護を頼む!」
「了解!」

 抑揚のない声の周防を除く全員が、勢いよく返事をする。

「ほな、いくでーーー」

 雷武の肩に取り付けられた霊子カノン砲が火をふいた!

「消えたい奴から前に出なさい!」
「…………」

 ローズと蘇芳は左右に散り、魔獣を的確に打ち抜いていく。彼等の機体は神武改『烈武』をカスタマイズした機体である。ローズ機は『乙型』周防機が『甲型』と規格されている。差違は遠距離から識別しやすくするため、蘇芳の機体が白と黒に塗り分けられているところであろう。

「シーリス、フローナ!あたいから離れるなよ」
「うん!」

 軽く後ろを振り向く赤い『剛武』の後ろで、シーリスの操る黄色の神武改『陽武-乙』と、フローナ操るオレンジの神武改『陽武-甲』がコクリとうなずいた。彼女達の機体は他の神武よりも一回り小さかった。彼女達の体格、成長速度にあわせて機体を調整できる仕組みになっているのだ。そのため、新しい機関など大幅に変更された点があり、神武改というよりもまったく新しい機体と言って差しつかえないかもしれない。

キン!キン!キン!

「はぁぁ!」

 神凪のふり降ろす剣と、ダルタニヤンの突き出す剣がぶつかり火花を散らす。

「わたくしがいる事をお忘れではないでしょうね」
「もちろんですとも。マドモワゼル」

 ダルタニヤンは、神凪の剣をそらし、れいかのくりだす薙刀を身を捻ってかわす。一瞬の出来事である。

「なんて奴だ。スキがない」
「ふふ。どうしました、動きが鈍いですよ。それっ!」

ギイーンッ

 ダルタニヤンが突き出した剣が神凪の操る神武改『真武』の肩をえぐる。

「くっ!」
「神凪さん!」
「少尉!」

 れいかが攻撃を仕掛け真武からダルタニヤンを遠ざける。

「大丈夫ですか神凪さん!」
「大丈夫、肩をすこしやられただけだ。支障はない」
「よくも少尉を!神崎風塵流胡蝶の舞!」

 麗武から放たれた霊気が焔となり、スュペルブジュルダンを襲う。

「甘い!」
「なんですって!」

 炎がスュペルブジュルダンに届く直前、マントによって撃ち払われてしまった。

「次はわたしの番ですよ、マドモワゼル」

 スュペルブジュルダンの剣がわずかに引いたと思った刹那………
 
「グランドゥール・エア!」
 
 無数の突きとなって麗武を襲った。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 スュペルブジュルダンの剣撃により生み出された衝撃波が、麗武を吹き飛ばした。『偉大なる大気』、神武改を吹きとばす力は想像を絶する、

ズガーーーンッ!

 吹き飛ばされた麗武は、轟音をともない建物の壁を壊し、そのまま壁にめり込んだ。崩れ落ちる瓦礫が麗武の上に降り注がれる。

「れいかくん!」
「れいかさん!」
「とどめです!グランドゥール・エア!」
「スネグーラチカーーーー」

 スュペルブジュルダンが麗武へと突進し剣を突き出す直前、強烈な冷気がスュペルブジュルダンを襲った。

「なんだと!!」

 れいかの危機を救ったのは、魔獣を倒しつつ駆けつけたローズと周防であった。

バキャンッ!

 とっさに距離を取ったスュペルブジュルダンであったが、ローズ達の技を完全にかわす事はできなかった。マントが凍り、砕け散る。

「なんという事だ・・・」
「隊長!吉野!今のうちにれいかを!」
「わかった!」
「はい!」

 即座に神凪と吉野が、れいかのもとに駆けつける。

「よくもマントを・・・許しはしない。許しはしないぞ!」

 砕け散ったマントに目を向けていたダルタニヤンは、怒気をあらわにし、叫んだ。

「な、なんや!あいつの霊力が上がっていきよる。まずいで!」

 魔獣の掃討に全力を上げていた春蘭は、突如上昇を始めたダルタニヤンの霊力に気付き声をあげる。
 
「くそー、こいつらだけでも面倒だってのに・・・ん?た、隊長!上ーーーー!」

 春蘭とシーリス達に近づく魔獣を相手に立ち回りを続けていたセンカが、麗武がめりこむ建物の上を指した。

「あ、あれは!」

 センカの声に頭上を見上げた神凪達は驚声を発した。建物の上部に備え付けられていた巨大な塔が崩れかけていたのだ。

「あーはっはっはっはっ!これは好都合ですね。そのまま建物に押しつぶされるがいい。グランドゥール・エア!」
「いけない!みんなその場から離れるのよ!」

 ローズが叫んだ直後、スュペルブジュルダンが繰り出した衝撃が建物に命中した。

「れいかくん機体を捨てて逃げるんだ!」
「瓦礫が邪魔をして外にでられませんわ!わたくしにかまわず逃げてください!」
「そんなことは・・・できません!」

 吉野の駆る翔武は、傷ついた麗武を庇うように盾を頭上へとやった。神凪も同様に剣を頭上に構える。

「そういうことだ」
「ば、馬鹿な真似はおやめになって!」

 ズンッーーーー!

 支柱が崩れ、塔が崩れ落ちてきた。巨大な塔である。いかに1号シリウス鋼が使われている神武改の装甲であれ耐えられるものではない。

「あかん!」
「隊長!吉野!れいかぁぁぁ!」

 春蘭が目を背けセンカが叫ぶと同時に、二つの影が二人の横をすり抜けていった。

「フローナはお兄ちゃん達を!」
「うん。わかった」

 黄色の霊力とオレンジ色の霊力を放つ、甲乙の陽武-である。

「ヤーーーッ!」
「エイッ!」

 次の瞬間センカ達は己の目を疑った。信じられない光景を、目にしたのだ

「まさか………こんな事が!」
「なんだってーーー」
「これはいったい!」
「・・・・・・」
「んな、なんちゅう力や」
「う、うそ」
「す、すごい」
「え、ええ?!」

 シーリスが目の前に手をやり叫ぶと、崩れ落ちる塔が空中で静止したのだ。陽武-乙の周囲を強力な霊力が渦巻いている。同時に叫んだフローナはその姿をかき消した。

「助けにきたよ、お兄ちゃん!」
「フ、フローナ!」
「いつの間に!」
「エイッーーーー!」

 突然目の前に現われたフローナは、返事をする変わりに大きく叫んだ!
 麗武を含めた四体の神武改が消え、シーリスの横に再び姿をあらわした。

ドッシャーーーーーン!

 それと同時に、静止していた塔は再び落下を始め崩れ落ち、辺りに砂埃が立ち込める。

「はあ、はあ、はあ。お兄ちゃん大丈夫?」

 シーリスは息をあらだてて言った。

「い、今のがシーリス達の力なのかい?」
「う、うん・・そうだよ・・・」

 シーリスがそう答えたとたん、陽武-乙は真武の方に倒れかかってきた。 

「シーリス!」
「へ、へいき。ちょっと疲れただけだよ」
「神凪さん!」

 吉野の声に、陽武-乙を支えながら振り向くと、フローナの乗る陽武-甲も、同様に吉野の翔武に支えられているのが目に映った。。

「当然ですわ。あれだけの物を空中で止め、神武改四機をここまで瞬間移動させたのですから、相当の霊力を放出したはず」

 傷つきながらも、両足で立ち上りながられいかは言った。

「でも、そのおかげで助かりましたわ。それと少尉に吉野さん・・・か、感謝してますわ」

 テレ隠しなのか、プイと神凪達に背を向けるれいかである。

「みんな大丈夫!」
「・・・・・・」

 ローズと周防が駆け寄ってくる。

「まったくすげえ力だよな。驚いたぜ」
「まったくや。こないなおチビちゃんにあれほどの力があったやなんて」

 続いてセンカ、春蘭が駆けつける。

「大丈夫かよれいか」
「ええ、この程度の事、どうって事ありませんわ。それより・・・」

 れいかの言葉に一同が一斉にダルタニヤンの乗る、スュペルブジュルダンへと目を向ける。

「ふふふ、はっはっはっはっは。まさか、そんな力を持つ者がいたとは、驚きましたよ」
「魔獣は仲間が全て倒してくれた!残るはおまえだけだ!」

 シーリスを春蘭にまかせ、神凪は剣を構えた。

「たしかに、わたしはリグドゴーレムを失った。しかし、倒せるかな?このわたしを」
「倒してみせる!」

 神凪の声に雷武、陽武を除く全員が、各々の構えをとる。

「神凪さん。ここはわたしに任せてもらえませんか?」
「なんだって?」
「あいつは、わたしの・・・北辰一刀流の本当の剣技を知らないはずです。それを使えば・・・」

 吉野の声には確固たる自信が見てとれる。

「北辰一刀流の剣技?・・・そうか!なるほど、それはいけるかもしれない」
「隊長、いったいどういう事なのですか?」
「説明している暇はない。とにかく、今この中で奴と同等以上の戦いができそうなのは吉野くんだけだという事だ」

 吉野の考えに真っ先に同意を示したのはセンカだった。

「理由なんてどうでもいいじゃねえか。吉野になら奴が倒せるって隊長まで言うんだ。あたいは二人の言葉を信じるぜ」
「良いですわ。今回は吉野さんをたててあげますわ」
「うちは北辰一刀流のことは知らんけど、あいつに優る剣技があるってことやろ。それやったらうちはなんも言うことあらへんわ」
「・・・わかりました。隊長と吉野を信じましょう」
「・・・俺も信じよう」

 みんなの同意を得、二、三の言葉を交わしたのち神凪は吉野を自分の後ろへと移動させた。

「ふっ、何をこそこそと話しているのかは分かりませんが、相談は終わったようですね」

 剣を下げ、花組の様子を伺っていたダルタニヤンは、再び剣を構え直した。

「よし!みんな手はずどうりにいくぞ!」
「了解!」

 勢いの良い返事とともに、神凪達は駆けだした。

「いくわよ周防!」
「はい!………」
「はぁぁぁぁ!スネグーラチカーー!」

 ローズと周防の力を併せ持つ精霊がスュペルブジュルダンを襲う。

「その程度の技が何度も通用すると思っているのか!グランドゥール・エア!」

 二つの霊力がぶつかりあい、砂塵を巻上げ爆発する。

「油断大敵ですわよ!」
「なに!!」
「あたいを忘れてんじゃないぜ」
「こざかしいわーーーー!」

 れいかの横薙ぎにはらった薙刀を剣で弾き、センカの足回し蹴りをはじき返す。

「その程度の力でわたしを倒そうなどとは、わたしも低く見られたものですね!はぁーー!」
「きゃあ!」
「うわぁ!」

 スュペルブジュルダンの攻撃がセンカとれいかを襲う。

「次は俺が相手だ!」

 神凪は剣を大上段に構え突進していった。振り降ろしては斬り上げ、横に薙ぐ。が、スュペルブジュルダンはそのことごとくを受けかわしていく。

「ふはははは!なんですかその剣の使い方は!遅い上にただ振り回しているだけ!そのような児技でわたしが倒せるとよく言ったものです!よく見ておきなさい!、これが真の剣技!はーーーっ!」
「くっ、まだまだぁ!・・・・・吉野くん!」
「はい!」

 神凪の言葉に吉野駆る翔武が、全速力でスュペルブジュルダンへと向かっていく。

「ははははは、雑魚が何人こようがわたしを倒す事などできはしない!」

───新轟雷号

「勝負あったな・・・・・・」

 壁にもたれかかっていた、マイヤーは低くつぶやいた。口元に軽い笑みを浮かべながら・・・・

───

「はぁぁぁぁぁぁぁ」
「あなた方の技などすでに見切っている!グランドゥール・・」
「やぁぁぁぁぁ!」

 二つの甲冑の間合いがつまり・・・

ガシィィィィィ!

「ふ、ふふふ、ま、まさかそのような技まであったとは・・・な。みくびりすぎたようだ・・・ゴフッ」
「剣を突き出す技は、あなただけのものじゃないわ。北辰一刀流は、突きが一番力を発揮するのよ」

 ダルタニヤンの駆るスュペルブジュルダンは、その腕から剣を落す。ダークブルーの胸を一本の刀に貫かれたまま。

「ふふ・・・その技を生かすため、おまえの仲間は・・・わざと剣を振り回したのか・・・わたしの油断をさそい・・・あなたの剣筋を隠すために・・・。ふふ、礼を言いますよマドモワゼル。最後の最後になって大切な事を思いだしましたよ・・・」
「え?」

 吉野の回りに仲間が集まってくる。その光景をダルタニヤンは微笑みながら見つめた。

『・・・』
「!」

 胸から突き出た剣に手をかけたダルタニヤンは、一気にそれを引き抜いた。

「聞け!帝國華撃團よ!これから汝等の前に、強大な敵が立ちはだかるだろう。だが、仲間を信じ進むがいい!されば道は開けよう!汝等に勝利の光があらん事を!」

 ダルタニヤンが叫び、翔武の剣を空に掲げた直後、スュペルブジュルダンは崩れだし、砂塵と化した。翔武の剣のみのを残し・・・・

「今のはいったいなんだよ。敵だったはずだろ」

 砂となったダルタニヤンを見つめ、センカがつぶやいた。

「わからない・・・でも、最後に本当の自分を取り戻した。・・・そんな気がしたよ」
「わたしも・・・そう思います。隊長」
「敵とはいえ、なかなか見所のある方でしたわ」
「・・・イーリス難しい事わからないよ」
「フローナも・・・」

 神凪のそばにゆっくりと吉野が近づいてきた。

「・・・神凪さん。ダルタニヤンはかすかな声で言いました・・・」

 言って、神凪を見上げる。その瞳はどことなく寂しそうだ。

「ひとりはみなのために、みなはひとりのために・・・と」
「ああ、確かに聞いた・・・」
「・・・「三銃士」の一節ですね」

 周防がぽつりともらす。彼が本当に中性ヨーロッパに名をはせたダルタニヤンであったのかはわからない。が、誇り高き銃士であると吉野は思いたかった、

「なんやもう、陰気くさいなーみんな。敵に同情すんのもええけど、うちらは勝ったんやで。もっと胸はってうちらがやった事に自信をもたなあかんのとちゃうん?」
「そうだな。春蘭の言う通りだ。彼のためにも誇りを持たないといけない」
「そ、そうですよね、わたしたちは間違っていない。そう思わないといけませんよね」
「おう、その通りだぜ!あたいらは世のため人のために戦ったんだ。もっとどうどうとしてなくちゃな」
「おーっほっほっほっほ。センカさんの口から、世のため人のためなどという言葉がでてくるなんて、思いもよりませんでしたわ」
「なんだとーー!」
「まあまあ、二人とも」

 二人をなだめる神凪の足をフローナがひっぱった。

「ねえねえ、お兄ちゃん」
「なんだいフローナ」
「ママから聞いたんだけど、戦いが終ったら「かぁてんこぉる」があるんでしょ?」

 フローナの言葉に全員が顔を見合わせる。

「そういや、今までやった事なかったよな」
「よくよく考えてみれば、そうですわね」
「じゃぁ、やりましょう!みんなそろった事だし」
「そらええわ、やろやろ」
「わーいわーい。かぁてんこぉるだ!かぁてんこぉるだぁ!」
「そうですね。………周防?」
「ええ、良いと思います」

 周防までが軽い笑みを浮かべる。  

「それじゃ、吉野くん頼むよ」
「わ、わたしがですか!」
「今日の功労者は誰がなんと言おうと吉野だぜ。なっ!」
「今回だけは譲ってさしあげますわ」
「そ、それじゃあ、いきますよ」

 みんな楽しそうな顔で吉野の合図を待った。

「勝利のポーズ!」
「キメッ!」

 







次回予告

次回予告(『なおろうでぃんぐ』で止まってしまった方用)
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